INTERVIEWS
スタッフインタビュー
DESIGNER
他にない、MARLMARL流
オートクチュール
MARLMARLで機能性とデザインを両立した商品デザインを担当している、デザイナー本澤明日香さん。STUDIO MARLMARLでは、普段のデザインとは全く異なるアプローチで服作りに取り組んだと語る。海外で買い付けた上質な素材へのこだわりや、子どもがより美しく見えるよう工夫したことについて聞いた。
特別な日の主役にふさわしい衣装
女の子が一度は憧れる、「絵本の中のお姫様」のようなドレス。
なめらかな光沢のシルクサテンや軽やかなチュール、指でなぞりたくなるような立体感のある手刺繍の施されたヴィンテージレース。
おとぎ話のように繊細かつ上質な、オートクチュール(*)の素材を使った衣装は子どもに「本物に触れてほしい」と考える大人にこそ価値のある、特別なものに仕上がっている。
子どもの愛らしさを引き立てるチュールやレースをふんだんに用いた衣装は、華やかながらも色味を抑えたことで装飾が際立つ、一見子ども服らしからぬモードを思わせる佇まいだ。
上質な素材が服の魂になる
特別な衣装を形にするためには、上質な素材が不可欠だと考えていた本澤さん。
「服そのもののシルエットの美しさを“かたち”と考えた時に“魂”“核”のようなものが欲しかった。それはたとえば蚕の繭からできたシルクの放つやわらかな光沢や、シャツのボタンに使われる貝の持つ質感だったり。」
そんな上質な素材を求めて、パリを訪れる。そこで見つけたのは、名だたるメゾンの芸術作品のような服作りを支えた、古いコレクションの布地や100年前のワンピース、手仕事のあたたかさを感じるシルクのコサージュなど。
生地や縫製をはじめ服作りのあらゆる工程に機械が欠かせない現代では、もはや作り出せないものばかりだ。
特別な一枚のために、デザインのアプローチを変える
求めていた素材を手にいれた。しかし、すぐにはデザインに取りかかれなかった。
それは、他にはない特別な一着を作るために、服へのアプローチを検討する必要があったから。
「今回の服作りでは特別な一着にふさわしい“美しさ”を追求していました。
一方、デザインを担当しているMARLMARLでは、日常着として身につけるうえでの“機能性”とデザインの両立、そして手に取りやすい価格を実現するための“コスト”のバランスを追求しています。まずは、デザインへのアプローチを見直すことが必要でした。」
そこで、自身が求めている世界観を可視化するために、これまでにストックしていたデザインを見直した。胸が高鳴るようなフリルの装飾に、気品を感じるセンシュアルなシルエット。コストを考えると量産品ではとても実現できないようなあしらいも、随所に採用されている。
純粋に美しさを追い求めた結果、MARLMARLと共通する部分も多い。控えめなボリューム感のシルエットや、色味を抑えてニュアンスカラーを用いたこと。そうすることで、過剰な子ども“らしさ”を排除し、その子の持つ魅力を引き出したいと考えられている。
大人の目線から「素敵」だと思えるようなデザインを、子どもが衣装を身につけた時に映えるバランスに落とし込まれている。
子どものかわいらしさを引き出す特別な一着であるために
今回の衣装は、子どもが服を身につけた時ではなく、撮影して写真ができあがった時に“完成”といえる。一瞬の動きや表情を素敵に残すために、衣装にもさまざまな工夫がこらされている。
「足が長く見えるようにウエスト位置を高めにし、いろいろな体型の子が着ることを考えてワンピースに見えるセパレートに仕立てることで、ひとりひとりの個性に合わせた調整を可能にしました。
また、ひと言で“子ども”といっても0歳と5歳では全く違うので、年齢ごとにパターンとデザインを変えています。
そういった細かな工夫が、写真の完成度を左右するのはもちろん、特別な思い出になる一瞬の笑顔を引き出すことができると思っています。」
*オートクチュール
ここでは、細かな調整を必要とする仮縫い、手作業の刺繍や手編みのレースなどの繊細な手仕事のことを指しています。